イワタニ開発ストーリー

小型容器の持ち運び自由な“ガスの電池”を開発する・・・・・この全く新しい発想のもとに、イワタニがカセットガスを使用した卓上式ガスこんろを開発し「イワタニホースノン・カセットフー」のブランドで他社に先駆けて発売したのは昭和44年(1969)、発売からすでに40年以上が経過しました。

卓上こんろの常識を覆す革命的商品―コンセプトは“ガスの電池”

 「LPガスはクリーンで便利エネルギーだが、灯油と違ってホースが欠かせないのが難点。このホースを取り払ってLPガスを缶に詰め、こんろとともに持ち運べるものにできないか」。こんな発案が岩谷産業岩谷直治社長(のちの名誉会長)から出されたのは昭和40年代初めのことでした。

 カートリッジ式ボンベのすぐ近くで着火・燃焼させるため安全性の確保が重要ですが、煮炊きするには一定の火力も必要になります。このため、商品開発には試行錯誤が重ねられました。下請けメーカー工場に大胆な投資もしながら準備を整え、ようやく販売にこぎ着けたのが昭和44年末(1969)でした。

 こうして発売した「カセットフー」は、夏場は屋外のパーティーに、冬場は一家だんらんでの鍋料理にと新しい食シーンを広げて好評を博しました。とくに昭和53年に安全機構を組み込んでからは商品としての完成度も高まり、厳しい商品テストで定評のある雑誌などで競合商品を押さえて高い評価を得るなど、カセットこんろの代名詞ともなっていきました。

 ちなみにカセットフー(cassette-feu)にはフランス語で「炎の小箱」の意味があります。カセットフーが開発・発売された昭和44年(1969)当時は、ちょうどカセットテープ・レコーダーが流行り始めたころ。カセットテープをレコーダーにセットするように、簡単にカセットガスをセットし、邪魔になるホースを要らなくし、どこでも自由に持ち運べ、手軽に使えるということを表現したネーミングです。いまでもおしゃれに感じられるこのネーミングは、製品そのものの利便性とも相まって、普及の大きな原動力となりました。

カセットフー初期モデル(昭和44年)食卓からガスホースがなくなりました。

カセットガス応用商品の開発続く―累計でカセットガス1億本、こんろ1千万台へ

 昭和59年(1984)は、「カセットフー」に使われる「カセットボンベ」応用の新商品を開発し始めた年です。当時カセットボンベはカートリッジボンベ(CB)と呼ばれていました。

 CBプロジェクトと名付けられた開発チームによる第一弾は、8月に発売したストーブ「カセット暖」で、持ち運びができる手軽さが好評を得て、初年度目標の10万台を軽く突破するヒットとなりました。続いて翌年以降も「ガスランプ」、「ポータブル冷蔵庫」と柔軟な発想で商品を開発を続けました。「カートリッジボンベ」は、量販店など販路を広げて昭和58年に累計販売本数が1億本を突破し、CB応用商品の拡大でさらに本数を伸ばして行きました。

 またCBプロジェクトでは「カセットフー」の新商品開発にも取り組みました。昭和59年に初めての2口こんろを発売するなどしてトップシェアを堅持し、昭和59年4月には「カセットフー」が累計販売台数1,000万台の大台に乗りました。

 なお、「カセットボンベ」は昭和63年に「カセットガス」に名称統一し、現在に至っています。

カセットガスストーブ「カセット暖」こんろの派生商品「カセットグリル」

「カセットフー」の販売チャネルの拡大

 当初、「カセットフー」販売の基盤を築いたのが、LPガス販売ルートでした。しかしながら、「カセットフー」商品としての魅力はLPガス販売ルートだけに収まるものではありません。やがて百貨店、スーパー等の量販店でも取り扱われるようになりました。最初は家電製品売場で販売されていましたが、昭和51年から家庭日用品売場へと進出し、折からのスーパーマーケット業態の拡大期とも重なり、累計販売300万台を突破しました。同年には、女優の浜木綿子さんをイワタニの顔として起用したこともあって、「カセットフー」はLPガス販売ルートに加えて一般流通ルートのヒット商品に育っていきました。

 現在、カセットガスとカセットこんろの年間消費量(平成20年)は、工業会加盟会社の合計でカセットガスが1億本、カセットこんろが300万台を数えるようになっています。

 「カセットフー」が発売されて40年、なぜロングセラーとして生き続けてこられたのか、その答えは「時代のライフスタイルの変化に即したカセットフーシリーズの商品開発」と「圧力感知安全機構に代表される安全対策・技術開発」にあります。また、防災用品としてのニーズも高く、特に災害時における緊急支援活動において貢献するところは、寄贈も含めて大きなものがあります。

「カセットフー」による災害救援

 イワタニでは早くから広域災害時にグループを挙げて、LPガス供給システムの復旧をはじめとする災害救援に取り組んできました。とりわけ「カセットフー」発売後は、ライフラインの崩壊した被災地に向けて何よりもまず日々の煮炊きをサポートするため「カセットフー」とボンベ(カセットガス)を緊急出荷する体制が整えられてきました。

 その先駆けとなったのが、昭和53年(1978)6月12日に発生した宮城県沖地震に対する救援活動です。同地震の被害者は死者28人、負傷者1万人余で、建物の全半壊は7,400戸、停電70万戸、断水7,000戸でした。仙台市や塩釜市、石巻市などの都市ガス供給ラインも破損し、約14万戸が供給停止状態となりました。

 イワタニでは被災住民支援のために、「カセットフー」2万台、ボンベ15万本を仙台に向けて緊急出荷しました。また、県内の福祉施設7ヵ所へ「カセットフー」を寄贈したほか、仙台市のガス供給がストップしている期間中は、1本300円のボンベを200円で販売するように販売店に指示して官庁、マスコミの評価を得ました。後日、この時の「カセットフー」の活躍に、仙台市長より栄誉ある感謝状を贈られました。まったくの異例のことであり、改めて被災地における「カセットフー」の存在が社会的にいかに大きなことであったかを知らされることとなりました。

 以後、長崎大水害(昭和57年7月)、日本海中部沖地震(昭和58年5月)、釧路沖地震(平成5年1月)、北海道南西沖地震(平成5年7月)など、大規模な自然災害が起こるたびに被災地に災害援助を行ってきました。

 平成7年1月17日早朝、死者6,434人、家屋全半壊約25万棟という未曾有の大災害となった阪神・淡路大震災が発生しました。過去の震災対応の経験をもとに当社では直ちに神戸市災害対策本部へ「カセットフー」3,000台、「カセット暖」1,000台、カセットガス10万本を寄贈。同時に工場で緊急増産体制を整え、1月26日までに「カセットフー」18万2,000台、カセットガス340万本を出荷しました。

 その後、平成10年9月には中国・長江流域の洪水被災地への救援物資として、平成12年10月モンゴルの大雪と干ばつ被災地へのODA物資として供給するなど、海外支援にも取り組みました。

 平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震では、新潟県災害対策本部、都市ガス各社、スーパーなどの要請に対応して、カセットこんろ約3万台、カセットガス約38万本を緊急出荷するなど、被災地の早期災害支援に貢献してきました。

 こうした取り組みを実績として、平成21年4月にはサウジアラムコ社とイワタニが、国内での大規模な自然災害時に被災地への緊急支援物資としてカセットガスとカセットこんろを無償提供をすることを目的とした「緊急災害時LPガス支援基金」を共同で設立しました。

宮城県沖地震時の緊急対応(昭和53年6月)

カセットこんろ「アモルフォ」に栄誉―ロングライフデザイン賞受賞

 財団法人日本産業デザイン振興会が主催する「GOOD DESIGN AWARD」において、平成18年(2006)10月、カセットこんろ「アモルフォ」が「ロングライフデザイン賞」を受賞しました。同賞は、グッドデザイン賞を受賞後10年以上継続して製造・販売し、今なおデザインが優れている商品に贈られます。「アモルフォ」はステンレスを使用した近未来的なデザインで、シリーズ最高級品として贈答用などで息長く売れ続け、累計販売台数11万台に達していました。カセットこんろは廉価品の攻勢を受けた時代もありましたが、付加価値の高い機能やデザインで他をリードしてきました。同年発売の「雅‐MIYABI‐」は翌平成19年のグッドデザイン賞を獲得し、トップメーカーの威厳を堅持しています。

ロングライフデザイン賞受賞「カセットフーアモルフォ」グッドデザイン賞受賞「カセットフー雅‐MIYABI-」

「カセットフー」の今後

 現在の「カセットフー」のキーワードとして「エコ」という言葉が挙げられます。従来のこんろと比較してガスの消費量を約16%カットし、少ないガスで大きなパワーを発揮する燃焼効率を高めた内炎式エコバーナーを採用したこんろの販売に力を入れています。

 平成17年(2005)8月にエコバーナーを搭載した第一号機「カセットフーエコ」発売から、平成20年(2008)8月にはスリムで美しいデザインの「カセットフーエコスリム」を追加しました。

 そして平成22年(2010)9月には「カセットフー」のフラッグシップモデル「アモルフォ」を平成3年(1991)デビュー以来、エコバーナーを搭載し「アモルフォ プレミアム」としてフルモデルチェンジを行いました。「アモルフォ プレミアム」もデザイン性と環境配慮が高く評価され、平成22年(2010)の「グッドデザイン賞」を受賞しました。

 また、個食や業務用のニーズを反映した「カセットフーエコジュニア」も同時期に発売を開始しました。

 今後は、環境に配慮したエコバーナー搭載機種を増やしていくと同時に、「ホームメイドシリーズ」と呼ばれるたこ焼器「炎たこ」、炉ばた焼器「炉ばた大将 炙屋」など、カセットガスで広がる世界をさらに演出していきます。

ロングライフデザイン賞受賞「カセットフーアモルフォ」グッドデザイン賞受賞「カセットフー雅‐MIYABI-」

カセットフーエコジュニアカセットガスたこ焼器「炎たこ」

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